ラ ドル知ヱ 美ータ。


イタリア旅行記/本/ライブ/映画/アート/まちあるきetc
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湖のほとりで

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イタリア/2007年
原題:
「La ragazza del lago」
原作:
「見知らぬ男の視線」

北イタリアのとある小さな村の湖のほとりで、村の少女のアンナの死体が発見された。刑事のサンツィオは捜査のために村人を調べて回るのだが、その過程で村中の家庭がそれぞれ様々な問題を抱えていることがわかる。


「決して好転はしない現実とどう向き合っていくか」

殺人とは一見無縁そうな小さなイタリアの町。「殺人とは一見無縁そうな」、場所というのはないのかもしれない。「あの真面目で、いつも明るく挨拶してくれる人が」、実は殺人者であるように。
殺人者でなくても、人は見かけによらなかったり、人に言えない悩みを抱えていたりする。刑事のサンツィオは、事件を追っていくうちに様々な人間とその悩みを知ることになるが、自らも悩みを抱えている。町、家族、その閉じられた空間の中で、決して好転はしないと分かっている現実。家庭、恋愛、病。ある者は、それを抱えきれず暴発させ、ある者はそれを静かに受け入れ、ある者はかすかな光に希望を託すのかもしれない。
原作はノルウェイのカリン・フォッスムという作家の「見知らぬ男の視線」という作品らしい。原作でもはもっとサスペンス的要素が強いのだろうか。映画では、舞台もイタリアの小さな町に移り、湖とアンナの美しさがとても印象的に映った。2007年のイタリア映画祭で上映された「まなざしの長さをはかって」を思い出したけれど、この作品のほうが後味は良かったように思う。
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by kaioko | 2010-07-18 16:19 | 映画・演劇

Hara Museum Arc

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群馬県渋川市にあるハラミュージアムアークに行く。渋川市から伊香保温泉を目指し、だんだんと観光地化してくる道程、伊香保グリーン牧場の一角に突如として姿を見せる、磯崎建築。メインカラーのグリーン×黒そのままに、なだらかに広がる緑の丘とおよそ美術館らしくない、黒い建物。このなかにやなぎみわさんのアヴァンギャルドな写真作品が収められているなんて、想像できようか。
中に入る前に、いやでも目にとまってしまう屋外作品たち。ウォーホルの「キャンベルズトマトスープ」がカフェの横に鎮座ましましている。きれいに刈り取られた芝生の上のそれは、まるでサイロのように聳え立っている。
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丘を下るかたちで歩き進み、エントラスホールから中に入ると、展示室が放射状に三つ配置されている。
企画展は「原美術館コレクション展-美術な物語」。
ギャラリーAで印象に残ったのはやなぎみわの作品、「My Grandmothers」から「AI」。「美術な物語」というテーマに沿っていて、AIおばあちゃんはじめ、写真に収められている人物の物語が、とめどなく溢れてくるような作品。

ギャラリーBはミランダ・ジュライの「廊下」という作品のみが展示されている。鑑賞者は長いコの字型の廊下を歩いて進むのだが、ちょうど視界の高さにメッセージボードがすえられており、前に進むのによけつつも、そこに書き込まれたメッセージが否が応にも目に入って読んでしまうという仕掛け。「作品にお手を触れないでください」という美術館の一般的ルール上、ボードに当たらないように進むにはなかなかのストレスを強要する作品である。いわゆるインスタレーションとよばれるアートのジャンルの作品で、「鑑賞」というよりは「体験」するという感じだ。書かれているメッセージは人生を深く考えさせる内容のようでもあり、意味が分からないたわごとのようでもあるが、要するに何でもいいのだ。作品を生み出す者になんらかの意図が仮にあったとしても、それを受け取るものの受け取り方は人の数だけあるのだから、というのがこの作品の意図のような気がする。

ギャラリーCは荒木経雄、ウォーホルなどと並んで、操上和美の作品に目がとまる。ホワイトキューブの中に整然と並べられたグラフィック作品の部屋と思っていると、かぼちゃの毒にやられてしまうかもしれない。そう、草間彌生だ。部屋の奥の引き戸を引くと、そこには「ミラールーム(かぼちゃ)」という名の拷問部屋が現れる。これも体験型アートか。

美術館にはもうひとつ灌海庵(タンカイアン、‘カイ’の字がパソコンで出ないのですが)という特別展示室があり、現代美術のほかにも原六郎氏の主に東洋古美術を中心としたコレクションが展示されている。意表を突く形で、まず目に飛び込んできたのは杉本博司の普遍であった。こんな群馬の山中の美術館で、今日も杉本さんの海はまごうことなき普遍をたたえてそこにあった。順に「ATLANTIC OCEAN」「IONIAN SEA」「BLACK SEA」と題されたゼラチンシルバープリント。被写体は海なのだけど、ただしそれは撮った場所、時間、いずれもから解き放たれた海だ。そんなことは絶対にないのだけれど、これらがはるか太古の昔の、生まれたての海を写したものといわれたら信じてしまいそうだ。
書院造を元にした灌海庵の中は、古美術と現代美術が互いに違和を生じさせることなく展示されている。作品数は少ないが、なんて実験的で贅沢な空間なんだろう。円山応挙の「淀川両岸図巻」が素晴らしい。
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通路にも光が溢れ、芝のグリーンと青い空が眩しい。芝を刈る赤い特殊自動車も作品の一部のようだ。美術館というのは内部は、白系クリーム色に統一されてきているが、外観については特に理論も理屈もなく様々な色が使われているのだという。しかし、黒い杉板張りの美術館なんて初めてだ。この美術館外観について藤森照信先生は、「アメリカのバーン建築」から発想されているのではないかと考察している。バーンとは、農場の牧舎や干草置場をさし、木造下見板張りで、日がたつと褐色が深まり、黒っぽくなるのだという。なるほど、実際に牧場の中にあり、周囲には羊がすやすや寝ていたり、草をのんびりはんでいるのが見受けられるのであるから、牧場とはイメージが結びつきやすい。しかし藤森さんはさらに色に着目しており、アメリカのミースと利休の黒という二つの黒を引き合いにだしている。そして、ハラミュージアムの黒は後者の黒であり、すなわち黒の中に全ての色が入っているような黒、豊かな黒であるとしている。
この黒い美術館のほんの一箇所でも黒がくすんだり、はげていたりしたならば、たちまち美術館としての魅力が半減してしまうだろう。一流の豊かなコレクションを抱きながら、周りの自然とも溶け合うバランス感は、黒という色の質感そのものに秘密があるのかもしれない。
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by kaioko | 2010-07-06 22:32 | アート・美術館

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