ラ ドル知ヱ 美ータ。
いつか、心から
いつか読書する日
/ アミューズソフトエンタテインメント
考えさせられてしまう映画だった。淡々と物語は進んでいくけれど、見終わったあとに心の深部にじわじわと染込んでくる映画。田中裕子、岸辺一徳、この二人が主演という時点で、なんとなくその映画の質感にひかれてしまう。
香川さん、出てます。セクハラ店長役ですが。チョイ役だけど、相変わらず印象に残る演技が見事。あと、仁科亜希子。たおやかな女らしさを持つ女優さんなのに、末期がん患者の役ということでよりやつれてみえる演技がとても印象に残りました。
人の人生は重き荷を背負いて遠き道を行くが如し。この映画の登場人物たちも、みな荷を背負って生きている。自ら背負う荷、背負わざるを得ない荷の違いはあるけれど。不倫やら、育児放棄やら、末期がんやら、交通事故やら、認知症やら、結構重いテーマがここかしこにちりばめられているけれど、現実の世界だってこうなんだよな。
主人公は牛乳という荷を背負いながら、毎日長崎の長い坂を上る50歳の独身女性、美奈子〈田中裕子〉。読書を唯一の趣味にしている。一方、市役所に勤める高梨(岸部一徳)は末期がんの妻(仁科亜希子)を看病し続けている。
■ネタバレ感想
美奈子が育ての親である叔母にこんなふうに語るシーンがある。
私、なにか欠けてるのかなと思っちゃった。
人に対する気持ちの、量みたいなもの
でも、さみしいと思ったことはないわ
「人に対する気持ちの量が足りないのではないか」、そんな風に思いながら生きていくのは悲しい。そして、苦しいと思う。でも、「さみしいと思ったことはない」という美奈子の言葉も強がりでなく50歳の女性の一つの真実だと思うのだ。ただ、ベッドの中で一人読書をして、泣く場面。その涙は、「カラマーゾフの兄弟」を読んで流した涙なのか、一人読書をする自分に流した涙なのか。少しでもさみしさに流した涙だったら、それは相当に悲しい。胸が痛くなる。
一方の高梨は、末期がんの妻の看病をしながら、日々を送っている。
美奈子も高梨も感情が、気持ちがないわけではなく、特にいつも穏やかな高梨が感情を爆発させる場面にははっとさせられる。そして、美奈子も高橋のそんなところに惹かれたのだと思う。
感情に鈍感などころか、むしろ敏感すぎるために気持ちを殺す「決心」をして生き続けてきた二人。
日常の生活の中で、考えないようにしているもの、触れないようにしているものの中に、真実が隠れている。それを発見して、気持ちを解放する瞬間、そこに二人の愛情が重なって、とてもまばゆい。
「いつか読書する日」というタイトル。読書を趣味としている人間が主人公である映画のタイトルとして、ちょっと不思議なように思われる。
この映画に率直なタイトルをつけるとしたら、「悲しき読書」・・・気持ちを殺す手段としての読書。でも、「人に対する気持ちの量」を計るには、「人」に対しないとだめなのだ。「本」じゃだめなのだ。しかし、だから、美奈子はこれから心から楽しんで読書ができるだろう。
「いつか読書する日」、そのタイトルには前向きな、希望の光のようなものが宿っている。このタイトルとラストのシーンに、少しだけ救われる。
/ アミューズソフトエンタテインメント
考えさせられてしまう映画だった。淡々と物語は進んでいくけれど、見終わったあとに心の深部にじわじわと染込んでくる映画。田中裕子、岸辺一徳、この二人が主演という時点で、なんとなくその映画の質感にひかれてしまう。
香川さん、出てます。セクハラ店長役ですが。チョイ役だけど、相変わらず印象に残る演技が見事。あと、仁科亜希子。たおやかな女らしさを持つ女優さんなのに、末期がん患者の役ということでよりやつれてみえる演技がとても印象に残りました。
人の人生は重き荷を背負いて遠き道を行くが如し。この映画の登場人物たちも、みな荷を背負って生きている。自ら背負う荷、背負わざるを得ない荷の違いはあるけれど。不倫やら、育児放棄やら、末期がんやら、交通事故やら、認知症やら、結構重いテーマがここかしこにちりばめられているけれど、現実の世界だってこうなんだよな。
主人公は牛乳という荷を背負いながら、毎日長崎の長い坂を上る50歳の独身女性、美奈子〈田中裕子〉。読書を唯一の趣味にしている。一方、市役所に勤める高梨(岸部一徳)は末期がんの妻(仁科亜希子)を看病し続けている。
■ネタバレ感想
美奈子が育ての親である叔母にこんなふうに語るシーンがある。
私、なにか欠けてるのかなと思っちゃった。
人に対する気持ちの、量みたいなもの
でも、さみしいと思ったことはないわ
「人に対する気持ちの量が足りないのではないか」、そんな風に思いながら生きていくのは悲しい。そして、苦しいと思う。でも、「さみしいと思ったことはない」という美奈子の言葉も強がりでなく50歳の女性の一つの真実だと思うのだ。ただ、ベッドの中で一人読書をして、泣く場面。その涙は、「カラマーゾフの兄弟」を読んで流した涙なのか、一人読書をする自分に流した涙なのか。少しでもさみしさに流した涙だったら、それは相当に悲しい。胸が痛くなる。
一方の高梨は、末期がんの妻の看病をしながら、日々を送っている。
美奈子も高梨も感情が、気持ちがないわけではなく、特にいつも穏やかな高梨が感情を爆発させる場面にははっとさせられる。そして、美奈子も高橋のそんなところに惹かれたのだと思う。
感情に鈍感などころか、むしろ敏感すぎるために気持ちを殺す「決心」をして生き続けてきた二人。
日常の生活の中で、考えないようにしているもの、触れないようにしているものの中に、真実が隠れている。それを発見して、気持ちを解放する瞬間、そこに二人の愛情が重なって、とてもまばゆい。
「いつか読書する日」というタイトル。読書を趣味としている人間が主人公である映画のタイトルとして、ちょっと不思議なように思われる。
この映画に率直なタイトルをつけるとしたら、「悲しき読書」・・・気持ちを殺す手段としての読書。でも、「人に対する気持ちの量」を計るには、「人」に対しないとだめなのだ。「本」じゃだめなのだ。しかし、だから、美奈子はこれから心から楽しんで読書ができるだろう。
「いつか読書する日」、そのタイトルには前向きな、希望の光のようなものが宿っている。このタイトルとラストのシーンに、少しだけ救われる。
by kaioko
| 2007-12-01 00:04
| 映画・演劇
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