ラ ドル知ヱ 美ータ。


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by kaioko
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le jour:群馬県立近代美術館

群馬県立近代美術館に行く。同美術館は県立公園「群馬の森」内にある。ちなみに、群馬の森は「旧東京第二陸軍造兵廠岩鼻製造所」跡地に「明治百年記念事業」として建設された森林公園である。美術館の設計は磯崎新氏。

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「1971年に設計を開始した当初から、この建設では、立方体という純粋幾何学を一つだけ選択し、その連結と配列によって美術館全体を構成する手法をとっている。12m角の立方体フレームを建築のモデュールとして規定し、緑豊かな森の中に連続している様をイメージしている。」


外観は白い壁で、白い立方体を組み合わせたイメージ。中に入っても確かに立方体が窓に、天井に、そして部屋そのものに繰り返されている。エントランスには四角い窓から差し込んだ自然光が床に「四角く」降り注いでいる。コンクリートの展示室入口も差し込む光の眩しさで、冷たさを感じさせない。館内のそこかしこでこうした立方体と光の調和を楽しめる。漂白された漂泊する空間。そこは美術史的文脈から切り離されて浮遊する感のあるモダンアートが置かれる場としてふさわしいように思われる。
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特別展示は「西洋版画の愉しみ―ゴヤからシャガールまで」
私の興味は最初に展示してあった三人に集中する。すなわち、ゴヤ、ルドン、ムンク。版画というのは、線や色が限定されるから対象をより単純化しなければいけない。だからこそ、その画家の原風景がまさに浮彫りになりうる。同じ白と黒の世界でも、同じ技法でも。
ゴヤは、「妄」と題される連作。ひっかき傷のような執拗に細かい線は人間の心の闇や狂気そのものを、そしてそれを暴くこの画家の激しさを表しているようである。ルドンになると、版画の黒い部分がまたゴヤとは違った闇を表す。それはどちらかといえば優しくぼんやりとしていて、思わず引き込まれそうになるDarker than blackだ。ルドンに強い影響を与えたアルマン・クラヴォーという植物学者の死を悼んで制作された「夢想」という作品集が展示されていた。中でも最後の「le jour:日の光」と題された作品が素晴らしく、ルドンの魅力が凝縮されていると感じた。

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ムンクになると少し色が入る。しかし、色は作品を「闇」から解放する代わりに「病み」を表出させる。なぜこんなにも「死」を感じさせるんだろう。有名な「マドンナ」の版画版もあった。周りに描かれているのは精子のモチーフなのだと初めて知った。マドンナの目は閉じているのに、近くで見ると骸骨の眼孔のように見えることも。死は生命の始まりであり、生は死の始まりである。


(↑)隣にあった「宇宙での出会いEncounter in Space」にも精子のイメージがあり、生と死というテーマを想起させたが、ムンクの言葉によるとちょっと違うようで、男女の運命的な出会いと別れを描いたもののようだ。

企画展示「東西南北天と地 六合の一年」も面白かった。「六合村」は群馬にある村で「くにむら」と読む。「六合」は「東西南北天と地は一つの六合(くに)をなす」という古事記の言葉からきている命名で、昔から世界中にあった古い世界観を表すそうだ。六合村に移り住んだアメリカの彫刻家スタン・アンダソンによる、六合村と美術館の展示空間とをリンクさせた、木や土などを使った作品が展示されている。六合村の自宅を展示室の中心とし、東西南北に実際に自宅の周りにある木や周辺で見ることのできる動物の皮(車で轢かれたり、自然死していたり、ハンターが残したものだそうだ)を配置している。「藤森建築と路上観察展」を思い出した。縄文建築団もびっくりだ。
「昔の人はその狭い世界をよく歩いて、そこにあるものを知り尽くしていた。現代人は(私も含めて)もっと広い知識を持っているが、案外、自分のいる場所をそんなによく知らない。」
そうかもしれない。見ることのできる動物の種類はこんなには多くないが、例えば日常目にする木々や花や空を飛ぶ鳥たちの名前を、その分布をよくは知らない。

常設展示では、イタリアのトランスアバンギャルディアの画家、クレメンテ、キオ、クッキという「イタリアの3C画家」が揃っていたのが興味深かった。古今東西の所蔵作品はなかなかのもの。暖かい日で、素敵な空間の中で気持ちの良い美術鑑賞ができた。

ミュージアムショップの法則:自分がいいと思った作品はポストカードになっていない。
(なぜなんだ!?)
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by kaioko | 2009-03-21 23:17 | アート・美術館

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