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ラ ドル知ヱ 美ータ。


イタリア旅行記/本/ライブ/映画/アート/まちあるきetc
by kaioko

フリック・トラップ

フリック 完全版/ ケイエスエス
妻を殺害されてから、酒浸りの毎日を過ごす刑事村田のマンションに、同僚の滑川が訪ねてくる。渋谷のラブホテルで起きた殺人事件の被害者の身元を確認するために、遺族を苫小牧から東京へ連れてくるという出張の任務を伝えにきたのだ。滑川は、やる気のない村田をなんとか説得して、北海道へ発つ。事件は、未解決の連続殺人事件と同一犯によるもので、迷宮入り必至とみなされていたが、被害者の実家を訪ねて疑問を抱いた村田は、独自に捜査を始める…。

「フリック」とは仏語の俗語で「刑事」を意味するらしい。妻を失ったショックで刑事職から退いている主人公村田が、ある殺人事件に関わることからストーリーは始まる。
全編154分。いったい何が真実で、何がアル中の主人公村田の妄想なのか。こんな映画つくちゃっていいのか。香川照之、田辺誠一、大塚寧々・・・この映画の出演俳優にもともと宿っているに違いない狂気のようなものがいっそう謎を深める。その混迷度はストーリーが進むにつれますます高まっていき、収束することがない。

全部が現実だったとしたら、あっという間に矛盾が発生してしまうわけだが、「これは真実だろう」と思わせるシーンがいくつもあって混乱する。被害者の女性の身内の絶望的なすすり泣きだとか、謎のバーで村田が顔を歪めて泣くシーンだとか、苫小牧の寂寥感漂う風景だとか。村田がビールを飲むペースがもはや異常で、人間こんな状態になったら妄想、しかも考えられる限り最悪の類の、妄想を見てしまうのかもしれない。

大塚寧々はなんて、白い部屋と、赤いソファと、そして温かな朝食が似合うんだろう。漂白された部屋。しかし、悲しいかな、この一見幸せそうなシーン、村田が過去の呪縛から逃れ、目の前の女と新しい人生を歩み始めようとするこの場面が、一番、いわゆる、世に言うところの、「妄想」っぽいのではないだろうか。
それよりも、雪が舞う苫小牧の路上や鮮血や叫びのほうがずっと現実のような気がしてきてしまう。赤いシトロエンの行く先は、暖かな光に包まれた幸福の地であると信じたい。

第1章と第2章の間の高田渡さんの「ブラザー軒」に肩の力が抜ける。この辺に監督のセンスを感じてしまう。
もう一度ゆっくりと観たい。
が、この映画のサブリミナル効果たるや絶大で、寝る前にみたら悪夢にうなされ、起きた後は非現実感にとらわれること必至。昼間に部屋のカーテンを閉めて観ることをお勧めします。
by kaioko | 2007-10-10 23:36 | 映画・演劇

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