ラ ドル知ヱ 美ータ。
The Soup,One Morning
100%純愛映画。
観終わった後に、こうコピーを銘うたなければならなかった意味が分かる。★★★★★
香川照之のキネマ旬報連載中の「日本魅録」の第3巻が2巻発売から短いインターバルで発刊されるということで、もう一度2巻を通読。その中で、香川さんが衝撃を受けた映画として、ついにはその監督作品にまで出演してしまったという高橋泉監督作品で、ピアフィルムフェスティバルでグランプリを、他多数の国内外の映画賞を獲った作品が本作「ある朝スウプは」。
観た結果、私も衝撃を受けて2回続けてDVDを観てしまうことになる。
物語は、秋に始まり冬を経て、春のある朝終わる。
パニック症候群を発症した北川と同居する女、志津。やがて、北川が新興宗教にはまっていき、ゆっくりと二人の関係が崩壊していく様を描く。
もそもそとしゃべる主人公たち。何をしゃべっているかも分かりづらいのに、二人をとりまく日常の音はうるさいくらいに響く。“スウプ”はおろかスープらしきものもいっこうにでてきやしないのだが、物語の冒頭、朝の食事の場面(普通の和食の朝ごはんっぽい、ミソスープなら出てくる)が印象に残る。二人の顔が端にキリギリに収まる位置に固定されたカメラで、食事のシーンは永遠に続くかに思える。会話は他愛のない仕事の話、しかし台本が本当にあるのか、と思えるくらい普通すぎてとても芝居とは思えない。
やがて二人の間に忍び込んでくる異物。嘘。
「宗教なんかじゃないよ」という北川に志津は一体なにを言えただろう。北川にとっては、彼の側が日常で、正しくて、何よりも彼自身が救われて、志津の方が間違っているのだ。
誰かを好きになるのに理由はない。この映画の二人にしたって、北川くん、志津と呼び合う仲はなにか曖昧だし、お互いにどこを好きになったのかまるで見えてこない。
だけど誰かと別れる時、その人を嫌いな理由があれば、それは幸せなことかもしれない。この二人の別れが残酷なのは、お互いがそれぞれを嫌いになったのではなくて、同じものを見られなかった、同じ道に進めなかったからだ。
志津を演じる並川愛枝は音楽も担当。ラスト近くで流れるピアノ、美しく正しい和音に戻ろうとして音楽が急ぐ。足がもつれて、転びそうで転ばないように流れる音楽。痛ましくて美しい。
by kaioko
| 2011-01-20 23:21
| 映画・演劇
カテゴリ
全体レッチェ・マテーラ2012.1
トスカーナ2010・11
ウンブリア2008・11
シチリア2007・11
カンパーニャ2007・2
エミリア・ロマーニャ2005・11
日記・雑記
国内旅行
本
アート・美術館
カルチョ
映画・演劇
音楽・ライブ
未分類
タグ
ライブ(55)イタリア映画(38)
曽我部恵一(31)
フラワーカンパニーズ(24)
ナポリ(16)
まちあるき(14)
香川照之(14)
森山未來(12)
ラーメンズ(10)
グルメ(10)
ピサ(10)
ウンブリア(8)
ラヴェンナ(7)
シチリア(7)
韓国映画(5)
漫画(4)
シエナ(3)
その他イタリア(2)
ローマ(1)
フィレンツェ(1)
ライフログ
現在のイタリア語教材
最新の記事
いとうせいこう再考 |
at 2013-05-07 22:36 |
ウィーン紀行2 |
at 2012-11-13 07:35 |
ウィーン紀行 |
at 2012-11-13 06:47 |
東京スカイツリー |
at 2012-06-19 21:36 |
パワーストーン |
at 2012-03-22 21:47 |
定期入れ |
at 2012-03-12 21:22 |
渋谷2012.3 |
at 2012-03-04 10:16 |
銀座2012.3 |
at 2012-03-04 09:54 |
チョコレート2012.2 |
at 2012-03-04 09:41 |
レッチェ、マテーラ写真集 |
at 2012-02-07 23:45 |