ラ ドル知ヱ 美ータ。
Cosmonauta(「コズモナウタ-宇宙飛行士」)
鑑賞三日目(5月4日)
この日は2本を鑑賞。「コズモナウタ」は期待以上に良かった。「Ex」は期待どおり面白かった。
Cosmonauta(「コズモナウタ-宇宙飛行士」)
1950、60年代、風変わりでてんかんの持病のある兄アルトゥ-ロと大胆で活発な妹ルチャーナは、共産主義を信奉し、コズモナウタ(ソ連の宇宙飛行士)に憧れる仲の良い子供だった。だが、異性の目が気になる10代半ばという年頃になった妹は、兄から距離を取り始める。
コズモナウタはソ連の宇宙飛行士、アストロノーツはアメリカの宇宙飛行士。共産主義を信奉するルチャーナにとってはもちろん宇宙飛行士=コズモナウタだ。ソ連とアメリカが競いあって、宇宙というフロンティアを開拓していた時代。それは多分に政治的なものであり、軍事競争であり、華やかさの裏に多くの犠牲があったことは、例えば宇宙飛行士たちのインタビューを収録したルポタージュ「宇宙からの帰還」を読むとよく分かる。あるいは、宇宙で命を落とすことが運命として決まっていたライカ犬の悲しい瞳-「Vincere」と同じく、実際の映像が差し込まれる本作。
中でも鮮烈なのは、物語の終盤に突如として挟み込まれる「ヤーチャイカ!」という女性の声。これは、ソ連の女性宇宙飛行士ヴァレンチーナ・ヴラヂーミロヴナ・テレシュコーヴァが、1963年に宇宙船ヴォストーク6号で女性で初の宇宙飛行を果たした際、使用したコールサインで、意味は「私はかもめ」。コールサインだから、実際にはたんに「こちら《チャイカ》、どうぞ」というような実務上の呼びかけであるが、チェーホフの小説のセリフに引用されているということからも分かるように、この言葉の響きにはロシア人の特別な叙情が含まれているようである。「ヤーチャイカ」、初の女性としての宇宙飛行という喜びと興奮、そして宇宙でのいいようのない孤独感と悲しみの全てがこの短いコールサインの中に含まれているような気がする。宇宙で悠々とだが孤独にさまよう一羽のかもめ。「地球は青かった」というあまりにも有名なガガーリンの言葉とはまた違った強烈さで、現代に生きる私の心に響く。
ルチャーナは若者の共産主義のグループに所属し、そこでも学校でも家庭でもさまざまな衝突を経験する。それらの衝突はルチャーナ自身の未熟さゆえでもあり、また当時の女性がまだまだ社会で力を持ちえなかったことにも起因する。監督はこの映画で「イデオロギーというものがいかに個人を圧迫するか」ということを描きたかったといっているが、ルチャーナもイデオロギーを持ちながら、結局はイデオロギーそのものと闘った一人の女の子だ。純粋な憧れのみをもって空を見つめる兄の存在は、同時代の良心を象徴しているのかもしれない。
こちらも見終わったあと、どこか清々しく、空をみつめたくなる作品。ロックを中心とした音楽も痛快で良い。
この日は2本を鑑賞。「コズモナウタ」は期待以上に良かった。「Ex」は期待どおり面白かった。
Cosmonauta(「コズモナウタ-宇宙飛行士」)
1950、60年代、風変わりでてんかんの持病のある兄アルトゥ-ロと大胆で活発な妹ルチャーナは、共産主義を信奉し、コズモナウタ(ソ連の宇宙飛行士)に憧れる仲の良い子供だった。だが、異性の目が気になる10代半ばという年頃になった妹は、兄から距離を取り始める。
コズモナウタはソ連の宇宙飛行士、アストロノーツはアメリカの宇宙飛行士。共産主義を信奉するルチャーナにとってはもちろん宇宙飛行士=コズモナウタだ。ソ連とアメリカが競いあって、宇宙というフロンティアを開拓していた時代。それは多分に政治的なものであり、軍事競争であり、華やかさの裏に多くの犠牲があったことは、例えば宇宙飛行士たちのインタビューを収録したルポタージュ「宇宙からの帰還」を読むとよく分かる。あるいは、宇宙で命を落とすことが運命として決まっていたライカ犬の悲しい瞳-「Vincere」と同じく、実際の映像が差し込まれる本作。
中でも鮮烈なのは、物語の終盤に突如として挟み込まれる「ヤーチャイカ!」という女性の声。これは、ソ連の女性宇宙飛行士ヴァレンチーナ・ヴラヂーミロヴナ・テレシュコーヴァが、1963年に宇宙船ヴォストーク6号で女性で初の宇宙飛行を果たした際、使用したコールサインで、意味は「私はかもめ」。コールサインだから、実際にはたんに「こちら《チャイカ》、どうぞ」というような実務上の呼びかけであるが、チェーホフの小説のセリフに引用されているということからも分かるように、この言葉の響きにはロシア人の特別な叙情が含まれているようである。「ヤーチャイカ」、初の女性としての宇宙飛行という喜びと興奮、そして宇宙でのいいようのない孤独感と悲しみの全てがこの短いコールサインの中に含まれているような気がする。宇宙で悠々とだが孤独にさまよう一羽のかもめ。「地球は青かった」というあまりにも有名なガガーリンの言葉とはまた違った強烈さで、現代に生きる私の心に響く。
ルチャーナは若者の共産主義のグループに所属し、そこでも学校でも家庭でもさまざまな衝突を経験する。それらの衝突はルチャーナ自身の未熟さゆえでもあり、また当時の女性がまだまだ社会で力を持ちえなかったことにも起因する。監督はこの映画で「イデオロギーというものがいかに個人を圧迫するか」ということを描きたかったといっているが、ルチャーナもイデオロギーを持ちながら、結局はイデオロギーそのものと闘った一人の女の子だ。純粋な憧れのみをもって空を見つめる兄の存在は、同時代の良心を象徴しているのかもしれない。
こちらも見終わったあと、どこか清々しく、空をみつめたくなる作品。ロックを中心とした音楽も痛快で良い。
by kaioko
| 2010-05-05 22:41
| 映画・演劇
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