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by kaioko

母なる証明

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漢方薬店で働きながら一人息子のトジュン(ウォンビン)と暮らす母親(キム・ヘジャ)。
ある日、二人の住む村で凄惨な殺人事件が起きる。第一容疑者として拘束されたトジュンの疑惑を晴らすため、母親はたった一人で真犯人を追う。


「母なる証明」、原題は「Mother」。韓国における「母」という存在の大きさ、重さ。古今東西、母と子の関係を描いた作品は数あれど、韓国における母親の存在というものはやはり日本のそれとは違う感じがする。私もハングルは全然分からないけれど「オモニ」という単語は知っているし、何か特別な感情が込められた響きがする。「母と子の関係、というものは人間関係の基本だ」とポン・ジュノ監督は語っている。ならば、この母と子の壮絶なストーリーを持って描き出したかった人間関係とはなんだったんだろう。 

冒頭のシーンから打ちのめされる。母演じるキム・ヘジャが草原を暗い表情で歩いてきたかと思うと、いきなり何かにとりつかれたように踊り出すシーン。母子の住む、おそらくはそれほど大きくない村の閉鎖的な暗さの中で渦巻く、更に暗い人間の心の闇。キム・ヘジャの狂気に満ちた眼差しと、ウォンビンの純粋な瞳が対照的で、その眼差しとサスペンス・ストーリーとしての巧みさに引き込まれていってしまう。そして、ポン・ジュノ監督は雨、血、薬、尿、ミネラルウォーター・・・あらゆる液体に画面の緊張感や激しさや、人間の感情を込めるのがとてもうまい。それは時に澄み、時には淀み、時には蒸気となり、乾いた大地に水が染込んでいくように画面を支配し、鑑賞者の脳裏にも染込んでくる。この作品は性的なテーマもあるけれど、そのウェットさも液体で表現されている気がする。

さて、人気絶頂の中で軍隊に入隊したウォンビンには鮮烈な印象を抱いたのを覚えている。難しい役どころを見事に演じきっていて、除隊してからの復活作とはとても思えない。あの上品な田舎っぽさは誰にでも醸し出せるものじゃないだろう。善とも悪ともつかない・・・それがこの映画のテーマでもあるが・・・重要な役どころとして登場するトジュンの友人のジンテ(チン・グ)は浅野忠信を意識したらしいが、成宮くんに見えてしかたなかった。そして何といってもキム・ヘジャさんの演技が凄まじい。「韓国の母」という偉大な呼び名が献上されているのにも、大いに納得。
サスペンスとしても十分面白いけれど、描かれているのは人間の根源。暗くて底の見えない沼のように深い作品です。

公式サイト(音が出ます)
by kaioko | 2009-12-27 17:04 | 映画・演劇

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